拡大オプションExpand Option)は事業を拡大するか否かの選択肢です。延期オプション(Option to Postpone)は投資の意志決定を延期する選択肢です。段階オプション(Time to Build Option)は、段階的に事業を拡大していく選択肢です。
現状では、種々の理由から不動産ビジネスでリアル・オプションを単純には応用しにくい面もありまが、この考え方を知っておけば事業判断をより的確に行えます。延期オプションや拡大オプションの考え方を知っていれば、その延期が本当に損なのかあるいは実は得なのか比較しようという発想になるでしょう。
事業の判断を行うためにどのようなオプションがあるのか、そしてそのオプションを行使したときに得られる効果はどの程度か等、具体的な検討が可能になります。
特に不動産事業のように、不確実性が高く投資額が大きい分野では、リアル・オプションの考え方を取入れることは非常に意味のあることです。
不動産の場合、株式や債券のように公開市場があっていつでも売却できるわけでありません。買い手も個々の不動産の条件を慎重に調査しますし、高額なので売り手と買い手の売買条件が合意に達するまでは時間が必要です。急いで売却しようとすると、足下を見られて買いたたかれるのが落ちです。
ですから、不動産に投資するときは、将来売却して投資資金を回収するための計画が必要です。これを不動産投資の出口戦略(Exit Strategy)と呼びます。計画どおりに売却するために活動しますが、売却しない方が得だと判断すれば無理に売却する必要はありません。
不動産投資の出口には、大きく分けて三種類あります。実物の売却、小口証券化そして不動産投資信託です。
実物で売却する場合は、その時点での不動産の価値が重要です。販売できる価値を維持するように、保有期間中も維持と補修を行います。必要に応じてバリューアップも考慮します。不動産投資信託(J-REIT)を利用する場合も、投資基準があるので同様の措置が必要です。
不動産投資ピジネスでは、証券化手法を活用することは必要不可欠の条件になっています。
実物不動産とはビルや住宅のように実際に存在する不動産のことです。キャッシュフローには、不動産が毎年生み出す利益(インカムゲイン)や売却したときの売却利益(キャピタルゲイン)も含まれています。
実物不動産への投資する上ので問題点は、投資が高額になることや、流動性が低くて売却したい時に売却できない等があります。証券化することによって、投資額が小さくなり、証券のまま売買できるので、実物不動産のもつ問題点を解決できると考えられています。
投資額が小さくなるので、不動産に資金を集中しなくてもすむので、投資リスクも分散しやすくなります。
①不動産に投資するための特別目的事業体(SPE : Spccial Purpose Entity)を設立します。
②SPEが実物不動産を購入します。
③SPEは実物不動産を購入するための資金を、証券(株式、債券など)を発行するか、あるいは金融機関からの借り入れ(ノンリコースローン)によって調達します。
④SPEは実物不動産が生み出すキャッシュフローから、金融機関には金利を、証券を買った投資家には配当を支払います。
証券化スキームでの用語について説明します。
【オリジネーター】(Originator)
証券化の対象になる不動産の所有者です。原資産保有者と訳されます。
【SPE】(SpedaI Purpose Entity)
オリジネーターから不動産を買い取るの特別目的事業体です。ビークル(Vehicle)とも呼ばれます。会社、信託、組合、匿名組合等の形態がありますが、会社形態が一番よく使われるので、SPE=SPC(SpeciaI Purpose Company:特別目的会社)のことを指す場合が多くなっています。
【ノンリコースローン】
借入れの返済原資が担保不動産の生み出す収益とその売却代金に限定されている借入れです。仮に全額の返済ができなくても、借入れ主はそれ以上の責任は追及されません。
【YKTKスキーム】
有限会社と匿名組合を組み合わせたスキームです。出資者(匿名組合員)が営業者(管轄官庁から許可を得た不動産特定共同事業者)に資金を預けて不動産運用を委託し、得られた利益の分配を受ける方式です。最大の利点は、スキーム組立の手間が少なく比較的短期間で各種手続きを終了できることです。
匿名組合は法人税がかからないので、出資者は法人税支払い前の利益の分配を受けることができます。また、出資者は出資額以上の損失を披ることはありません。
【TMKスキーム】
資産の流動化に関連する法律(資産流動化法)に基づいて設立された特定目的会社を活用するスキームです。一定の要件を満たせば実質的に法人税がかかりません。YKTKスキームに無いメリット、資本金か最低10万円で良い、有価証券を発行できる、特定共同事業者の許可が不要等があります。
但し、事前にスキーム全体を詳細に記載した資産流動化計画を管轄の財務局に提出しなければなりません。従って、YKTKスキームに比べて契約書数も多くなります。
国土交通省によると、2001年度、2002年度ともに約3兆円弱の不動産が証券化されて、現在までに証券化された不動産累計は約9兆円にもなっています。
証券化された不動産の状況はというと、証券化が始ったばかりの初期にはオフィスビルがほとんどでしたが、2002年度ではオフィスビルが29.9%、住宅が21.6%、商業施設が7.1%と、オフィスビル以外の用途の不動産が増加しています。
自己不動産を、資産から切離して流動化するために行うのが、典型的な例です。この場合、不動産が貸借対照表から外されるため、その評価リスクから逃れることが可能です。
あるいは、 開発型証券化と呼ばれる、不動産会社がSPE(特別目的事業体)を作って特定の土地を取得し、上物建築するタイプもあります。
資産流動化型の特徴は、資産から外したり開発するための資金を調達するために、特定の不動産を活用することです。つまり、不動産があるので、それをどう活用するかではじめるタイプとも言えます。
従来は企業等が資産から外すために証券化を行うのが資産流動型のほとんどでしたが、近年開発型証券化も増えています。
代表的な資産運用型証券には不動産投資信託(J-REIT)とプライベートファンドがあります。
不動産投資信託:Real Estate Investment Trust (J-REIT)
2000年5月に投資信託法(投資信託及び投資法人に関する法律)が改正され、日本でも、不動産などを主な運用対象とする不動産投資信託が可能になりました。
プライベートファンド(Private Fund):私募ファンド
特定かつ少数の投資家の投資を受けて、複数の不動産に投資します。情報開示の義務がないので、市場規模は類推で5000億円から1兆円に達しているといわれています。
プライベートファンドは投資家のニーズによって投資形態が異なり、稼働している不動産に投資するもの、価値向上を狙うもの、短期間での売買利益を狙うもの等さまざまな形態があります。
ポイントは
①証券化の目的とその優先順位を確立します。
多くの目的には外せない物とそうでない物があるので、それを明確にしないと作業は進みません。
②権利関係や収益状況を十分調査し把握します。
枠組づくりが目的はありません。実際の不動産の状況を良く理解しないと、将来の収益に甚大な被害が出る可能性があります。
③契約書の作成とチェックは十分慎重に時間を掛けて行う。
証券化で売買するときの契約書数は、実際の売買に比べてとても多くなります。多くの関係者が生れるので、証券化の枠組やリスクを誰が見てもわかるような形で契約書を作らなければなりません。
ですから、契約書が膨大になってしまうので、関係者同士が相互にチェックすることも必要になります。ですから、時間がかかるのです。
TMKスキームでは、資産流動化計画の作成、優先出資証券や特定社債の発行などの手続きが増えます。YKTKスキームよりもその分、時間と手間が必要になります。
SPEにとって非常に重要な不動産が、オリジネーターの倒産に影響されてしまうと、投資家はSPEヘ投資をしたり、ノンリコースローンを貸し出したりできません。ですから、真正売買の成立の有無は非常に重要です。
2.倒産隔離
バンクラプシー・リモート(Bankruptcy Remote)とも言います。
オリジネーターの倒産リスクにSPEが影響されない措置でもあり、倒産状態のSPEを倒産させない方法でもあります。
3.オフバランス
不動産を所有するオリジネーターがSPEへ不動産を譲渡する時、経理上でも売買の経歴を残し、オリジネーターの資産から除外するかどうかの判断することをオフバランスの問題と言います。
4.リスクヘの対応策
不動産を証券化する作業において、目的の不動産の様々な投資リスクが明らかになることがあります。証券化のリスク以外にも実際のリスクにも対応する必要があります。
まず、急速に不動産投資市場が成長し、証券化の環境が整ってきました。不動産投資家も増えています。
次に、対象となる不動産の範囲が広がっています。対象が、オフィスビルから住宅、商業施設へと拡大しています。アメリカではホテル、倉庫、医療関連施設も証券化されています。
そして、ノンリコースローンが普及しています。
さらに、証券化の標準化が進んでいます。契約形態も整備されそのコストも低下傾向にあります。
資産運用型の証券化市場はさらに拡大するでしょう。
従来は不動産を貸借対照表から外すために証券化が行われていましたが、その市場規模が拡大するに従い、資産運用型の証券化市場が急速に拡大しました。
今後も両者ともに成長するでしょうが、市場規模では資産運用型が圧倒的に大きいのです。このタイプの証券化が日本に根付けば、証券化市場の拡大は可能です。
そのためには、金融市場から資金を移動させ得るだけの信頼性が求められています。情報開示はもちろんのこと、参加する全ての人が市場を育てるという意識を持って行動する必要があります。
しかし、証券化を計画し検討を始めると、本来の目的を忘れることが往々にしてあります。
資金調達のためだけにに売却するのなら、入札で売却した方が高値で売却出来て有利かもしれません。でも、売却後もプロパティマネジメントを継続した時や仲介等で引続きその物件への関与を望むなら、証券化手法を使ってSPCに売却するのも方法の一つです。
今後の資金調達の選択肢として勉強するためなら、今回は利益が望めなくても証券化を選択する必然性は有ります。
重要なのは、証券化を目的にせず最も有利な方法を選択する事です。
貸借対照表から外せます。
不動産価値が下落すると減損会計の対象になるので、貸借対照表から外して資産保有リスクを減少させることが可能です。また、不動産への投資単位を小口化したり、条件の異なる各種証券を作り出して、投資しやすくし有利な条件で貸借対照表から外す事も可能です。
ただし、その関与の度合によっては外せなくります。
2.資金調達手段の多様化
SPEへの不動産売却代金は縛りのない資金として調達できます。借入金の返済に充当したり、より収益性の高い不動産に再投資することも可能になります。
不動産をSPEに売却し、貸借対照表から外すと調達資金の金利面でもメリットもあります。
3.資産効率の改善
収益性の低い不動産を外して、資産の収益性・効率性の向上が可能です。
不動産の証券化によってそれがSPEのものになっても、不動産価格の5%を限度にSPEに出資して配当を受けたり、SPEの業務等を受託し手数料を得られれば、それからも収益が可能です。
これは、資産を使わないビジネスなので広い意味で会社全体の資産効率の改善につながります。
2.流動性の向上
資産をすぐに売却して現金に換えられることが投資判断の重要なポイントになります。
実物不動産は株等に比して流動性が低いのですが、証券であればそのままで別の投資家に売却もできます。不動産投資信託(REIT)であればよりメリットがあります。
3.投資の多様化
不動産の収益構造は株式や債券とは異なります。株式と債券の中間位のリスクとリターンをもっています。
証券化された不動産は投資しやすく、株式、債券に加えてポートフォリオ(投資対象の組合せ)の多様化を図ることができるのです。
米国の機関投資家は、不動産の証券化商品をオルタナティブ投資(代替投資:株式や債券などの一般的な投資対象を補完する投資のことです)と位置づけポートフォリオの投資対象に組み入れています。